親知らずのはえ方や抜歯が必要な場合とは
- 2023年10月23日
- 口腔外科
前から数えて8番目に生えている親知らずは、斜めに生えていたり、埋まっていたりすることでほかの歯に影響を及ぼすことがあります。そんな親知らずですが、抜歯する必要がなくきれいに生えているという方もおられます。
親知らずの生え方の種類
親知らずの生え方には4つの種類があり、それぞれ口腔内に及ぼすトラブルが異なります。
まっすぐ生えている
隣の歯と並んでまっすぐ綺麗に生えている親知らずは、上の歯とも咬み合いやすく歯ブラシも届きやすいという特徴があります。そのため、しっかり歯磨きができればむし歯や歯周病のリスクも少なく、親知らずが生えている歯茎が炎症を起こしてしまうことも少ないと考えられます。
横向きまたは斜め
横向きや斜めに生えている親知らずは、隣の歯にぶつかるように生えているため歯ブラシが届きづらく、プラークや磨き残しが溜まってむし歯や歯周病の原因となってしまいます。また、磨き残しが溜まっている状態で体の抵抗力が落ちたときに、細菌が急増し炎症を起こす、智歯周囲炎と呼ばれる状態になってしまうこともあり、歯肉が腫れたり触ると痛みがでたりします。
歯茎の中に埋まっている
歯茎の中に完全に埋まっている親知らずは、目で見ることができないためむし歯や歯周病で歯科医院に行き、レントゲンを撮ったときに発見されることがほとんどです。完全に埋まっている状態なら汚れが溜まることもなく、むし歯や歯周病を引き起こすこともありませんが、骨の中に袋状の空砲である嚢胞を作り、骨の圧迫をしてしまうなどトラブルの原因となる可能性もあります。
逆さ向きに生えている
親知らずが逆さに生えている場合、口腔内には出ず埋まっている状態なので、歯茎の中に埋まっているケースと同様にむし歯や歯周病のリスクは低いものの、嚢胞を作ってしまう可能性があります。そのため放置していても問題ないケースもありますが、痛みを感じたり腫れたりした場合は抜歯を検討する必要があります。
親知らずがきれいに生える人の割合
きれいに親知らずが生えている人の割合は約3割で、残りの7割の人は斜めに生えていたり、埋まっていたりします。原因は食生活の変化が骨や歯に影響を与えたことと考えられていて、斜めになったり横を向いたりしてしまい、きれいに生えないということも少なくありません。
親知らずがきれいに生えてこない理由
人類が進化する過程において、旧人の親知らずはまっすぐきれいに生えていたとされていますが、それ以降、新人の時代に入り親知らずはまっすぐ生えてくることが少なくなりました。簡単に咬み切れないような食事を多くとっていた旧人と違い、新人は火を使い食べ物を柔らかくできるようになったことが原因だと考えられています。身体の中でもっとも安定した組織といわれている歯は、骨などと比べると進化しづらいという特徴があるため、顎の骨は進化し小さくなっているのに対して、歯の大きさは変わっていないことから、親知らずがきれいに生えてこないとされていますわ、
親知らずが生えない人
他の永久歯が16歳頃までにすべて生えそろうのに対して、親知らずは18~20歳前後で生えてくる歯です。親知らずは、誰にでもあるわけではなく、以下の理由によって生えてこないという方もいます。
・口の中に親知らずが生えるスペースがない
・遺伝によって生えてこない
生えるスペースがなく親知らずが生えてこないという場合は、実は歯茎の中に埋まっていて見えていないだけというケースがあります。この状態で無理に生えてこようとすると、斜めや頭だけが出ているという状態になってしまいます。また、通常、歯胚と呼ばれる歯の卵のようなものが成長して歯になっていきますが、生まれつき親知らずの歯胚がないという方もいます。その場合は遺伝によって親知らずが生えてこない体質だということになります。
親知らずを抜くべき判断基準
親知らずは、上下ともにきれいに生えていて咬み合っていれば抜く必要はありません。では、どのようなケースで親知らずを抜いたほうがよいと判断されるのでしょうか。
周囲の歯茎が炎症を繰り返している
親知らずが原因で隣の歯との間がきれいにブラッシングできていないと、汚れが溜まることで細菌が増え、炎症を起こしてしまうことがあります。この状態を智歯周囲炎といい、以下のような症状が出ます。
・歯肉が腫れる
・口をあけにくくなる
・触ったときに痛みが生じる
・何もしていないときもズキズキ痛む
智歯周囲炎は、段階的に症状が悪化しますが、何もしていなくてもズキズキ痛むなどの症状が出て我慢できなくなり歯科医院を受診するという方が多いです。歯科医院では、消毒や抗生物質の処方によって一時的に症状を抑えることができますが、ストレスが溜まっていたり身体が疲れていたりすると智歯周囲炎は再発してしまいます。重症化すると呼吸困難になるなどの重篤な症状を引き起こすことも考えられるため、繰り返し智歯周囲炎によって炎症が起こるケースは抜歯を勧められることになります。
親知らずがむし歯になってしまった
親知らずの生え方によっては、ブラッシングしづらいことが原因で汚れが溜まりやすく、むし歯になってしまうことがあります。その場合、そもそもむし歯になった原因が歯ブラシがうまく届かないからということなので、治療をしてもまたむし歯になってしまう可能性が考えられます。さらに、歯ブラシが届きにくい場所ということは、治療もしづらい場所である可能性が高く、よく見えない、器具が届かないといったことから治療が困難な可能性もあります。そのため、親知らずがむし歯になってしまった場合は、むし歯の治療をするよりも抜歯するという選択をする方が多いです。
親知らずが原因で周囲の歯がむし歯になってしまった
親知らずと隣接している歯も、ブラッシングが行き届かないことが原因でむし歯になってしまうことがあります。その場合、親知らずがあると治療が困難だったり、治療をしても再発してしまったりする可能性があることから、抜歯を検討することになります。親知らずをそのままにしておくことで、むし歯になっている歯の状態が悪くなりすぎてしまい、保存ができなくなるケースもあります。そのため、手前の歯を守るために親知らずを抜くという治療方針を提案されることもあると思います。
歯並びに悪影響を与えている
親知らずが横向きに生えていることで、手前の歯を押してしまい歯並びが崩れる原因となっていることがあります。この場合は成長段階で発見する必要がありますが、他の永久歯が生えそろっているにもかかわらず、歯列の後方から前方に向かって横に押す力が加わることで、歯並びに影響を与えます。以前は歯並びが整っていたのに、年齢を重ねて前歯の向きが変わってしまった、歯並びがデコボコになってきたという方は親知らずの抜歯を検討したほうがよいかもしれません。しかし、親知らずを抜歯しても、崩れてしまった歯並びが整うわけではないので、その後歯列矯正によって歯並びを整える必要があります。