インプラントの誤解
- 2023年11月13日
- インプラント
インプラント治療は、1990年代ごろから日本でも普及し始めた歯科医療技術で、人工歯根を顎の骨に埋入し、その上に義歯を取り付けることでむし歯や歯周病などによって失われた歯を補います。審美性や耐久性に優れ、自然な使用感が得られるとして評判の治療法ですが、一部にはまるで完全無欠な技術であるかのような誤解も広まっています。今回はインプラント治療に関して誤解されやすいいくつかの点について解説したいと思います。
誰でもできるわけではない
まず基本的な事項として知っておくべきなのは、この治療法は誰にでも適用できるわけではないという点です。インプラント治療は顎の骨にドリルで穴をあけ、そこに人工歯根を埋め込みます。つまり外科手術が必要になります。数ある手術の中では比較的身体への負担が軽い方ですが、それでもたとえば1型糖尿病や免疫不全など、免疫力が低下する病気にかかっている人は、術後の治りが悪かったり埋め込んだ人工歯根が骨と固着しなかったりするリスクがあるため、施術には向いていません。また、麻酔や出血などによって予期せぬ体調変化が起きやすい状態の人も、インプラント治療は避けた方が良いとされています。具体的には、心臓病患者や妊娠中の女性などがこれに該当します。さらに、骨粗しょう症によって骨の状態が悪化している人も、埋め込んだ人工歯根を支えきれないおそれがあります。
一生ものではない
インプラント治療に関して誤解されがちな点の1つに、いったん装着すれば一生もつというものがあります。確かにインプラントはブリッジや入れ歯に比べると寿命が長いというのが大きな特徴ですが、それでも一生ものというわけではありません。平均的な耐久期間は、きちんとメンテナンスを行っている前提で10年~20年程度です。再治療が必要になる理由として多いのが、上に取り付けた人口の歯が欠けてしまうというケースです。また、インプラントの周囲が炎症を起こし、それが骨にまで及んで根元がぐらついてしまうというケースもあります。時にはせっかく埋め込んだインプラントを撤去しなければならなくなることもあります。寿命を伸ばすには、定期的なケアが非常に重要です。歯磨き等のセルフケアはもちろん、定期的に通院して歯の状態をチェックする必要があります。
天然歯よりも優れているわけではない
インプラントはブリッジや入れ歯よりも強い負荷に耐えることができ、噛む力が天然の歯と比べても遜色がないことから、第二の永久歯などと呼ばれることがあります。ただ、こうした呼び名からインプラントがまるで天然歯よりも優れているかのような誤解も一部に生じています。確かに装着後は天然の歯に近い自然な使用感が得られますが、やはり人工物である以上、天然の歯を上回るということはありません。むし歯になってもどうせ悪くなってもインプラントがあるから大丈夫などと考えて放置したりせず、早期治療に努めることが大切です。インプラント治療はまだまだ進歩の余地がある技術です。インプラントの製造メーカーは世界各国に設立されており、競い合いながら品質の向上を目指しています。今後これまで以上に天然の歯に近いインプラントが開発される可能性はあります。
正しい知識を
歯は食べ物を噛み砕いて体内に送り込み、健康維持に必要な栄養を摂取するという、人間にとってなくてはならない器官です。もちろん、言葉によるコミュニケーションを行う際にも欠かせません。つまり、歯は生きていくうえで重要な一部です。そのため、歯を治療する際には、自分の身体や生活全体を守るために行うのだという心構えを持つ必要があります。インプラント治療などを検討する際は、しっかりとした正しい知識を身につけ、不明な点は歯科医師に聞くなどしてその効果やリスクについて十分に認識したうえで治療を受けるようにすることが大切かと思います。