インフルエンザワクチン
- 2023年10月15日
- その他
そろそろインフルエンザワクチンの接種をお考えの方もおられる時期ではないでしょうか。
1. インフルエンザワクチンの効果
インフルエンザワクチンでインフルエンザにかかることをある程度予防できます。ワクチン接種は現在、最も高い予防効果が認められている手法です。18-64歳の健康成人については、ワクチンによって70%から85%程度のインフルエンザ感染が予防できたという報告が見られます。子供や65歳以上の高齢者では予防できる割合がもう少し低いと報告されており、数十%から70%程度予防できたという報告が見られます。ワクチンを接種していてもインフルエンザ感染がゼロになるわけではありません。
インフルエンザワクチンは高齢者には効かない?
高齢者もインフルエンザワクチンでインフルエンザを予防できます。ただし、予防効果は若年成人よりも低いことが知られています。一般的にインフルエンザワクチンは健康な成人や青年で特に高い効果が出ます。高齢者や、持病がある人では相対的に効果が少なくなる傾向にあります。 しかし、ワクチンにはインフルエンザの発症を予防するだけではなく、重症化を防ぐ効果もあると考えられ、その点でワクチン接種の意義は大きいと考えられます。また、高齢者のインフルエンザ予防には、ワクチンによる集団免疫の効果も重要と考えられます。集団免疫とは、健康な小児や成人がワクチンを接種することで社会全体のインフルエンザ流行が抑制され、結果的に高齢者のインフルエンザを減らすという効果です。つまり、みなが予防接種を受けることで、インフルエンザ対して弱い人(子ども、高齢者、免疫の弱い人など)を社会全体で守ってあげるという考えです。
2. インフルエンザワクチンの副作用
インフルエンザワクチンの接種後には、注射をした部位が赤く腫れたり、熱を持って痛みを生じたりすることがあります。ワクチンの副作用であり、副反応とも言います。これらは局所的な免疫・炎症による反応で、数日間で自然に改善します。全身の発熱や寒け、頭痛、だるさといった症状が出ることもあります。これはワクチンによってインフルエンザにかかったためではありません。ほかの病気のワクチンでも同様に見られる反応です。免疫反応が強く出ていることが原因です。接種を受けた方の5-10%程度に起きますが、数日間で自然に改善します。
また、ほかのあらゆる薬と同じように、インフルエンザワクチンに対する強いアレルギー反応を起こしてしまう可能性がゼロではありません。インフルエンザに関連した死亡者数は、例年国内で1万人前後とされています。インフルエンザワクチンによる副作用(副反応)にももちろん注意は必要ですが、インフルエンザワクチンを打たないことによる悪影響のほうがはるかに大きいという考えから、予防接種が推奨されています。
インフルエンザワクチンの副作用でインフルエンザになるのか?
インフルエンザワクチンでインフルエンザにかかることはありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンと呼ばれます。ウイルスを殺して感染力を無くしたものを接種しています。対して生ワクチンという種類のワクチンは生きたウイルスを接種します。不活化ワクチンを接種しても体内でウイルスが増殖することはありません。毎年世界で何億という人がインフルエンザワクチンを打っていますが、ワクチンが明らかな原因としてインフルエンザに感染したという例は未だ1人も報告がありません。ただし、インフルエンザワクチンを打ったのにインフルエンザにかかってしまうことはあります。特にワクチンを打ってから2週間以内は、まだワクチンによる免疫がついていません。ワクチンを打って数日後にインフルエンザを発症してもワクチンが原因ではありません。ほかの人から感染したウイルスが原因です。
3. インフルエンザワクチンを打ってはいけない人
以下の方はインフルエンザワクチンを打つことができません。
・6ヶ月未満の乳児(免疫がつかず、かつ、十分な過去の経験がないため)
・インフルエンザワクチンもしくはワクチンの成分に対して、命に関わるアレルギー反応をおこした経験のある方
インフルエンザワクチンは熱がある場合
微熱程度で、全身の具合がさほど悪くない場合には、インフルエンザのワクチン接種は可能です。それを上回る体調不良の場合は基本的には接種を見合わせるべきですが、特別な事情や不安があるときには、医師と相談の上で接種を行う場合があります。
4. インフルエンザワクチンの作り方
インフルエンザワクチンの製造には6か月から9か月を要します。毎年少しずつ異なる型のウイルスが流行するのですが、そのシーズンに流行し始めた型を見定めてからでは間に合いませんので、前年度に流行したインフルエンザの型をもとにしてワクチンが作られます。具体的な手順としては、鶏卵を利用してウイルスを培養します。鶏卵の内部に注射したウイルスが増殖するのを待ち、それらを集めて、余分な成分(卵に含まれる、アレルギーの原因となるようなタンパク質など)を取り除きます。そして、最後にウイルスの病原性を無くすために不活化させる処理を行い、ワクチンが生成されます。
WHO(世界保健機関)が100以上の国からサンプルを集め、毎年2月に(その次のシーズンの)北半球の季節性インフルエンザに対するワクチンの構成を決定します。型が決まってからそれに基づいてワクチンを十分量生産するまでに半年近くかかるため、前年度の流行型をもとに予測して決定することになります。
5. インフルエンザワクチンの費用
インフルエンザワクチンは、接種する施設ごとに料金が違います。1回接種の場合には数千円から5,000円程度のことが多いです。高齢者の場合には各自治体からの補助があり、安く受けられる、あるいは無料のケースがあります。
インフルエンザワクチンの費用はなぜ病院ごとに違うのか
インフルエンザワクチンには、健康保険が適用されません。保険は一般的に病気の治療に対して適用されるものであり、ワクチン接種は治療ではなく予防であるためです。制度上は自費診療と呼ばれる形式になり、費用は病院やクリニックごとに独自で定めています。なお、市区町村によってはワクチン接種に助成金を出しているところもあり、そのような地域では他よりも安い金額で接種を受けることができる場合もあります。
6. インフルエンザワクチンを打った日の注意
インフルエンザのワクチン接種当日に注意すべき点をまとめます。
・通常通りのシャワーや入浴は大丈夫です。
・注射をした部位を強くこすったり、温め過ぎるのは避けてください。皮下出血が広がって腫れやすくなる可能性があります。
・当日の飲み過ぎは避けましょう、とする医療機関が多い。
・当日の激しい運動は避けましょう、とする医療機関が多い。
・少なくとも接種後30分間は、アレルギー反応の有無を見定めるために運動を避けることが望まれます。
・ワクチン接種後は注射部位の腫れや熱、また寒けや頭痛などの症状が出ることがあります。ワクチンに対する免疫反応です。インフルエンザにかかったわけではありません。自然に改善します。
7. インフルエンザワクチンはいつ打つ
インフルエンザワクチンとほかのワクチンは同時に打っても大丈夫か
インフルエンザワクチンは、医学的には他のワクチンと同時に打てます。複数のワクチンを接種する場合、従来は時期をずらして接種する医療機関が多かったのですが、世界的には同時接種が普及してきています。同時接種に関して「医師が必要と認めた場合に2種類以上の予防接種を同時に行うことができる」とされてています。同時に接種することのメリットとしては、手間や費用が軽くなることと、間隔を空ける必要がないので、より早い時期に多くの病気に対する免疫をつけることができることがあります。なお、同時に接種する場合であっても、それぞれのワクチンを混ぜて一回の注射で済ませることはできません。少しずつずらした場所に、別々に注射を行うことになります。
厚生労働省の指定している、インフルエンザワクチンの接種回数は以下の通りです。
・6ヶ月から3歳未満:通常の半量を2回接種
・3歳以上13歳未満:通常量を2回接種
・13歳以上:通常量を1回接種
それまでインフルエンザにかかったことのない割合が高いであろう小児については、2-4週間(もしくはそれ以上)の間を空けて2回接種することで、より高い免疫効果が期待できます。このように1回目の接種で少し免疫が付いた後に、間隔を空けて2回目を打つと飛躍的に免疫力が高まることを、ブースター効果と呼びます。成人でも2回打ってはいけないということはありませんが、1回打ちも2回打ちに劣らない免疫効果が得られるとされています。なお、13歳以上であっても、著しく免疫力が低下するような病気にかかっている人のような場合には、医師の判断で2回接種が勧められる場合があります。