乳歯が抜けない
- 2023年10月2日
- 小児歯科
乳歯は基本的に5歳前後から中学生に入るくらいまでに抜け落ち、永久歯に生え変わるとされています。乳歯が抜けることは子どもが成長していることの証でもあるので、お子様の歯が抜けるのを待っているという親御さんも多いのではないでしょうか。しかし、乳歯がなかなか抜けないこともあります。乳歯が抜けない原因にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、乳歯が抜けない原因や、抜けないことによる影響についてご紹介します。
乳歯が抜けるしくみ
永久歯の種である歯胚は、妊娠3~5か月ころから作られ始め、歯ぐきの中で成長しています。永久歯の成長が終わり生え始める準備ができるまでの間、歯ぐきの表に生えているのが乳歯です。永久歯が生える準備を終え、乳歯の根元のあたりまで到達すると、破菌細胞という細胞が乳歯の根っこを溶かし始めます。一定の割合溶かしてしまうと、乳歯がぐらぐらと揺れ始め、やがて抜け落ちてしまいます。 つまり、永久歯が成長し、生える準備が整うことで、乳歯は抜けるという仕組みになっており、逆に言えば、永久歯が育たないと乳歯は抜けないということになります。
乳歯が抜けない人が増えている
一般的に、乳歯は5歳前後から中学生に上がるまでの期間で抜けてしまいます。しかし最近は、30代、40代になっても乳歯が抜けない人が増えています。割合は7~8%程度であるとされており、男性よりも女性に多い傾向です。
乳歯が抜けない人が増えている原因としては、かつてと比べて柔らかい食事をとることが多くなった現代社会の食生活がそのひとつとして挙げられていますが、はっきりしたことはわかっていません。
乳歯がなかなか抜けない主な原因
永久歯の成長が遅れている : 先にもふれました通り、乳歯は永久歯が成長することによって根元が溶け、抜け落ちます。体の成長速度が人によって異なるように、永久歯の成長速度は人それぞれです。永久歯の成長速度が遅いという場合は、必然的に乳歯が抜ける時期も遅くなってしまいます。早い人は5歳前後で生え変わりますが、中には中学生に上がってから生え変わる人もいます。周囲と比べて生え変わりが遅いと不安になることがあると思いますが、成長速度は人それぞれ違うのだということを念頭に置いて、様子を見るようにしてください。
埋伏歯 : 埋伏歯とは、永久歯が骨や粘膜に埋まった(埋伏)まま、生えてこない状態(またはそのような状態の永久歯)のことをいいます。最もよく知られた埋伏歯は親知らずですが、ときに奥歯だけではなく別の永久歯が埋伏歯になってしまうことがあります。永久歯が埋まったまま生えてこなければ、乳歯の根っこが溶けることがなく、乳歯は抜け落ちません。歯並びなどに問題がなければ埋伏歯はそのままにしておいて問題ありませんが、歯並びが乱れるなどのトラブルがある場合は、外科手術によって埋伏歯が生えられるようにする必要があります。また、永久歯の生える位置がずれることでも、乳歯が抜け落ちなくなることがあり、そのような場合は乳歯を抜歯して、永久歯の位置を調整することになります。
先天性欠如 : 基本的に永久歯は誰であっても生えてくるものですが、中には、先天的に永久歯が生えてこないという方もいます。そのことを先天性欠如と呼び、この場合、永久歯が生えてこないため乳歯が抜け落ちません。全体の約1割の人が先天性欠如であると言われており、永久歯が欠如する位置として多いのは、前から2番目の歯と、5番目の歯であるとされています。
乳歯が抜けないことの影響
先天性欠如で乳歯が抜けない場合は、永久歯は生えてきませんので、乳歯をずっと使い続けることになります。しかし、乳歯は永久歯に生え変わることを前提に生えてくるものですので、一生使い続けることができるほど頑丈に作られていません。だいたいの場合、大人になると自然に抜け落ちてしまいます。大人になってから乳歯が抜け落ちると、ほかの歯とのバランスが悪くなり、歯並びが悪くなってしまうかもしれません。歯並びが悪くなると噛み合わせが狂い、体に余計な負担を与えてしまいます。中学生くらいまでは乳歯が抜けないことは珍しいことではありませんが、なかなか乳歯が抜けないという場合には、その原因が何なのか、歯科医で診てもらって明確にしておく必要があると言えます。将来的に歯並びが悪くなってしまう可能性もありますので、専門的なアドバイスを受け、今後の方針を確認しておくことが重要です。
乳歯が抜ける時期は人によってさまざまです。中には中学生まで歯が生え変わらないという方も珍しくありません。お子様の歯がなかなか抜けない場合も、それほど焦ることなく、落ち着いて経過観察をしていただければと思います。